国民年金だけではなく年金には繰上げ支給と繰下げ支給という制度があります。

簡単にいえば繰上げというのは年金の支給を早めることで、繰下げというのは遅く受け取ることです。

 

繰上げ支給

  • 年金をもともとの支給年齢よりも早く受け取りはじめる
  • ただし年金は一定割合減額される

 

繰下げ支給

  • 年金をもともとの支給開始年齢よりも遅く受け取りはじめる
  • その代わりに年金は一定割合増額される

 

ということでメリットとデメリットとが混在しています。

今回はこの国民年金の繰上げと繰下げの制度内容や損得について解説をしたいと思います。

 

国民年金の繰上げ支給の要件、対象者

 

65歳から支給が開始されるのが老齢基礎年金ですが、その支給開始年齢を早めるのが繰上げ支給となります。

 

  • 60歳以上65歳未満の人が対象
  • 65歳に達する前に支給繰上げの請求をすることが必要
  • 同時に厚生年金の老齢厚生年金の繰上げ請求もしなければいけない

 

さらに繰上げ支給ができない人としては

 

  • 国民年金の任意加入被保険者
  • 昭和16年4月1日以前の生まれの者で被保険者である者

 

というようになっています。

 

国民年金の繰上げ支給の減額率とは?

 

繰上げ支給をすればそのタイミングによって減額率も変わってきます。

繰上げ支給での減額率の計算方法ですが、

 

減額率 = 5/1000 × 繰上げ請求をした日の属する月から65歳に達する日の属する月の前月までの月数

 

というようになります。

減額率の目安ですが、

 

  • 60歳で請求(60ヶ月) 30%
  • 61歳で請求(48ヶ月) 24%
  • 62歳で請求(36ヶ月) 18%
  • 63歳で請求(24ヶ月) 12%
  • 64歳で請求(12ヶ月) 6%

 

となります。

1ヶ月ごとに0.5%ずつ減額率が適用されることがわかります。

非常に重要なことですが、減額率は一旦繰上げ請求をすれば生涯変わることはないということです。

減額率が適用されれば減額率が回復したりすることはありません。

 

国民年金の繰上げ支給の開始時期

 

繰上げ支給をすれば請求日に老齢基礎年金の受給権が発生しますが、実際に支給されるのは請求日の属する月の翌月からとなります。

 

国民年金の繰上げ支給とその効果、影響

 

繰上げ支給をすれば年金の減額とともに他の制度への影響も出てきます。

 

  • 付加年金があれば付加年金にも同様の減額率が適用される
  • 被保険者であった者に支給される障害基礎年金、事後重症による障害基礎年金、基準障害による障害基礎年金と20歳前の傷病による障害基礎年金のうち事後重症にかかるものは支給されなくなる
  • その他障害による障害基礎年金の改定請求もできなくなる
  • その他障害との併合による障害基礎年金の支給停止解除もできなくなる
  • 寡婦年金の受給権は消滅する
  • 遺族厚生年金については65歳に達するまでの間はいずれか1つを選択して支給されることになる
  • 繰上げ支給をすれば以後は国民年金に任意加入できなくなる

 

国民年金の繰下げ支給の要件、対象者

 

繰下げ支給は逆に支給開始時期を遅らせることです。

 

  • 老齢基礎年金の受給権を有すること
  • 66歳に達する前に老齢基礎年金の裁定請求をしていなかったこと

 

というような条件を満たすことで申出することで繰下げ支給となります。

繰下げ支給の対象とならない人ですが、

 

  • 65歳に達したときに障害基礎年金、遺族基礎年金の受給権者であったとき
  • 65歳に達したときに厚生年金の保険給付(ただし老齢を支給事由とするものを除く)の受給権者であったとき
  • 65歳に達した日から66歳に達した日までの間において他の年金たる給付(障害基礎年金、遺族基礎年金、厚生年金の老齢厚生年金以外)の受給権者となったとき

 

というようなときには繰下げの対象外となります。

 

国民年金の繰下げ支給の増額率

 

国民年金の繰下げ支給の申出を行うことで年金の増額が行われますが、

 

増額率 = 7/1000 × 老齢基礎年金の受給権を取得した日の属する月から繰下げ申出をした日の属する月の前月までの月数

 

というような増額率となります。

この算出式における月数の限度は60ヶ月となっています。

増額率の例ですが、

 

  • 12ヶ月 8.4%
  • 24ヶ月 16.8%
  • 36ヶ月 25.2%
  • 48ヶ月 33.6%
  • 60ヶ月 42%

 

というようになります。

つまり繰下げによって1ヶ月あたり0.7%ずつ増額していくというようになります。

やはり繰下げ支給でも増額率は生涯変わらないので、その後終身でその増額率がずっと適用されて受給していくことになります。

 

国民年金の繰下げ支給の開始時期

 

繰下げ支給の申出を行うと、その申出のあった日の属する月の翌月から支給が開始されます。

付加年金があれば付加年金にも繰下げの増額率が適用されて以後受給できるようになります。

 

国民年金の繰下げ支給のポイントや注意点

 

この他、繰下げ支給でいくつか注意して欲しいこともあるので列挙しておきますと

 

  • 支給繰下げは老齢厚生年金と同時に行う必要はない
  • 他の年金たる給付の受給権を得ていても65歳に達したときまでにその受給権が消滅していれば繰下げの申出を行うことができる
  • 寡婦年金の支給を受けていても繰下げの申出を行うことができる

 

年金の繰下げ支給と加給年金

 

老齢厚生年金を受ける人について加給年金という制度もあります。

この加給年金というのはわかりやすくいいますと配偶者、子がいるときに追加支給される家族手当のようなものです。

 

  • 被保険者期間が240月以上あること
  • 65歳未満の配偶者、18歳年度末までの子などがいるとき

 

というような条件を満たす配偶者、子がいるときに支給されます。

この加給年金ですが、年金の繰下げ支給をするとその間は支給がストップしてしまいます。

さらに繰り下げ支給の増額率も加給年金に対しては適用されません。

加給年金額ですが、

 

  • 配偶者   224700円×改定率
  • 第1~2子  224700円×改定率
  • 第3子   74900円×改定率

 

というような金額となりますので、どの程度の加給年金を受ける条件なのかによって繰下げするべきかどうかも変わってくることになります。

 

年金の裁定請求忘れと繰下げの申出

 

老齢基礎年金では年金支給の開始の少し前に裁定請求のための郵送物が届くようになっています。

そのときに裁定請求をし忘れたり、しなかったときに繰下げ支給を申出しなければいけないのかどうかということですが、

 

  • 繰下げの申出をする
  • 65歳からの本来の支給

 

とでどちらかを選択することができるというようになります。

本来の支給を選択すれば、65歳の本来の年金支給の開始時期から現時点までのものが一括支給されます。

 

国民年金の繰上げ、繰下げ支給のメリット、デメリット

 

要するに繰上げ、繰下げでは減額、増額率が適用されるというところが最大の違いとなります。

国民年金ではどのタイミングで支給を開始させるのが最もお得なのかということですが、結論からいいますとその人ごとの寿命が大きく影響してきます。

すべてのパターンについて説明することは難しいですが、今回は平均寿命を使って計算していきましょう。

 

  • 男性 81歳
  • 女性 87歳

 

直近のデータによりますと日本人の平均寿命はこのような数値になっています。

 

 

この表は国民年金だけでなく厚生年金も支給される人も含めたものです。

平均とされる年金の受給額をベースにそれぞれ繰下げ、繰上げの最大5年までの受給額を男女別に計算しています。

これによりますと平均寿命前後まで生きたとしますと

 

  • 男性は67歳まで繰下げ支給するのが最もお得
  • 女性は70歳まで繰下げ支給するのが最もお得

 

となります。

 

国民年金の繰上げ、繰下げの申請、手続き方法

 

では国民年金の繰上げ、繰下げ支給をするときに申請はどのようにしていけば良いのかということですが、

 

  • 繰上げは老齢基礎年金支給繰上げ請求書、裁定請求書を年金事務所に提出する
  • 繰下げは老齢基礎年金・老齢厚生年金支給繰下げ請求書を年金事務所に提出する

 

手続きとしてはこのように書類を1~2枚提出するだけで済むのですが、個人的には年金事務所に訪問して相談しておくほうが良いかと思います。

個人ごとに細かい条件があり、それによって繰上げ、繰下げでどのようになっていくのかというケースも変わってくることも多いからです。

その上で窓口で繰上げ、繰下げの手続きをしていくほうが良いかと思います。

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